今夜はきっと眠れない
 部長が目で催促してくるのを見て、私はにんまり笑って言った。

「A社の契約、とれました!」
「本当か」
 がたっと部長が席を立つ。

 事前の調査ではライバル会社が優勢だった。
 プレゼンでもライバル社のほうが受けがよくて、うちはもうダメだと思っていた。

「君ががんばってくれたおかげだ。每日残業して資料を漁ってA社の分析をしてたもんな」
「部長がヒントをくれたおかげです。あれでひらめきました」

「そういう謙虚なところも素敵だと思うよ」
「ありがとうございます」

 私は冷静を装って頭を下げた。
 私は内心で、くうう、たまんない! と声を上げた。

 こんな褒められ方して、テンションが上がらないわけがない。
 心の中では、私の分身がダンスを踊って喜んでいた。
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