距離感ゼロ 〜副社長と私の恋の攻防戦〜
「副社長……」
「わ!どうしたの?顔が真っ赤。ひょっとしてのぼせた?」

バスローブを着て、フラフラとリビングに戻った芹奈に、翔は慌てて駆け寄る。
芹奈はポーッと顔を上気させ、目を潤ませながら翔を見上げた。

「お水、ください」
「分かった。ほら、ここに座ってて」

ソファに座らせると、急いで冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。

「はい、飲める?」

手を添えて飲ませると、芹奈はボトルの半分ほど一気に飲み、ふう、と息をついた。

「少しは落ち着いた?」
「はい、大丈夫です」
「髪もまだ乾かしてないのか。待ってて」

翔はドライヤーを持って来ると、隣に座って芹奈の髪を乾かし始める。
大きな手で髪をなでられる心地良さに身を任せていた芹奈は、だんだんトロンとまぶたが重くなってきた。

「サラサラして綺麗な髪だね。はい、これくらいでいいかな?」

そう言って翔がドライヤーのスイッチを切る。
すると、トンと芹奈が肩にもたれかかってきた。

「ん?里見さん?」

スーッと気持ち良さそうに眠っている芹奈に、翔はクスッと笑う。

「可愛いな。俺に食べられたらどうするんだろ?」

無防備な芹奈の寝顔は、一気に翔の身体を熱くさせる。
だがそれ以上に、翔は芹奈を大切にしたかった。

「ごめん、これだけ許して」

耳元でそうささやくと、翔は芹奈の頬に優しく口づけた。
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