パーフェクト・フィグ
背もたれに身を預け、
足元を見ながら独り言のように呟いた。
「…俺があの場にいても、
梶木教授の指示に従った」
「!」
すみれが勢いよく顔を上げる。
それから雅俊を見て、
「君も同じか」と肩を落とした。
それを察したように、
雅俊はすみれと同じ月を見上げて言った。
「…お前のためでもある」
すみれがチラッと視線を雅俊に向ける。
雅俊は構わず続けた。
「あのままオペを強行すれば、
お前は家族から訴えられたかもしれない。
医師免許剥奪のリスクもあった」
「そんなの…」
「そんなのどうでもいい」
と、雅俊が遮る。
「あの子を助けられるなら。
そう思う気持ちもわかる」
「…」
何も言わないすみれに、
雅俊は長い脚に両肘をついて、
すみれの表情を伺って言った。
「…大阪で、何があった」