外商部御曹司は先輩彼女に最上級のロマンスを提供する
 名ばかり教育係のわたしは花岡君が実は少しだけ苦手なのだ。入社し半年で創業100年の百貨店において存在感を放つ彼が羨ましくある。

(この時期、わたしだって担当売り場に立ちたかったよ)

 注文した日替わりメニューは好物の親子丼。頂きます、手を合わせ一口すると色々飲み込む。頼りない先輩だけれど本音は気取らせてはいけない。

「親子丼好きなんですか?」

「親子丼だけじゃなくカツ丼、牛丼も好きだよ! モリモリ食べてもうひと頑張りしようって気持ちになれる!」

「とか言って本当は食事の時間を短縮したいんじゃ? 沢山召し上がって元気になるのは賛成ですが、よく噛まずに掻き込むと消化不良を起こしますよ。肌荒れの原因にもなります」

「ーー前から思ってたけど、花岡君って美意識高い。この間はポテトチップ食べてた時に肌荒れ注意されたし。うん、ありがとう、気を付けるね!」

「え?」

 切り返しにポカンとする花岡君。

「え? って何?」

「俺、そんなに口うるさく言ってしまってーーすいません」

「うるさいなんて思ってない」

 きっぱり否定しておく。
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