落ちこぼれ悪魔の扱い方
全部、叶わない願いになっちゃったよ。
「はは、は……」
美弥は虚ろな笑い声を上げる。
こんな絶望的な状況なのに、涙はつゆほども出なかった。
が、そんなの今に始まったことではない。
父を失ったあの日から、美弥の涙腺は機能を止めたのだ。
気が付くと美弥は、ガードレールの前に立たされていた。
おそらく転落防止用のものだろう。
ガードレールの後ろはすぐ崖で、岩肌にぶつかって砕ける波が肉眼でも観察できる。
美弥を両脇から捕まえていた二人は手を離し、一歩後ろに下がった。
「恨むだろう」
背後から無感動な声が聞こえてくる。大柄な男だ。
「でも仕方がない。頼むから死んでくれ。俺たちをこれ以上、壊さないでくれ」
美弥が男の言葉を咀嚼しきっていないうちに、背中を強く突き飛ばされる感覚がした。
遂にこの瞬間が来た。
美弥の小さな体躯はいとも簡単にガードレールを越え、死の断崖へと放られていく。
「助けて」
美弥の口は、自然にそう動いていた。
「助けて……与崎」
そして静かに、悪魔の名前を紡いだ。