落ちこぼれ悪魔の扱い方
声を聞いた時から、だいたい察していた。
これが与崎の素顔だということに。
与崎は、神妙な面持ちでゆっくりと口を開く。
「……美弥、だよな?」
「そうだけど」
美弥は何気なく答える。
与崎の瞳が、一瞬ふるりと揺れた。
「生きてる、よな」
掠れ気味の声でそう言って、美弥の頬をぺちぺちと軽く叩く。
その手には、濡れそぼった黒いドレスグローブがはめられていた。
「そうだけど?」
美弥はいたずらっぽく微笑む。
与崎の表情が、泣く寸前のように歪んでいく。
「……良かった」
ぽたぽたと、美弥の顔に水滴が落ちる。
与崎の声は震えていた。
「お前、マジで死んだかと思った。呼んでも全然、起きないし、本当に……」
そこで言葉を止め、与崎は両手で顔を覆う。
一度大きく嗚咽を上げた後、手を離す。
「心配かけんなよ」
与崎は充血した目で、泣き笑いの表情を浮かべる。
安堵と感謝と、申し訳なさがいっぺんに押し寄せる。
感情の奔流に巻き込まれながらも、美弥は笑顔を返した。
こんな時に素直に泣けていいなと、ちょっぴり与崎が羨ましくもなった。
そんな思いは口に出さず、美弥は「謝らせてもらっていい?」と尋ねる。
答えを待たずに、美弥ははっきりと言った。
「ごめんね。それから、ありがとう」