落ちこぼれ悪魔の扱い方
そんな美弥の心中も知らず、与崎は尚も語りかけてくる。
「ただ、直接手を下すってのは結構精神に負荷がかかるものだ。それだけは分かってほしい」
そう宥める与崎の声は、今までの険しいものとは違って穏やかだった。
諭す時の声音に近いかもしれない。
「お前にとってもトラウマになりかねないし。そんなんじゃお前、幸せになれないだろ」
そんな口調で言われたら、自分のためだけに幸せを願ってくれているのではないかと錯覚しそうになる。
これは与崎のためでもあるのに。
「……なんか熱くなっちゃって、ごめんね」
美弥はぼそぼそと呟く。
怒りはせせらぎのような声に角を削られ、いつの間にかなくなっていた。
「怒るのも無理ねえよ。大切な家族だったんだろ? もっと慎重に扱うべき話題だったよな」
与崎は苦笑し、「同居二日目から喧嘩なんて嫌だよな」とおどけた。
美弥も何とか笑顔を取り戻したが、どうしても気まずい雰囲気は拭い去れない。
美弥が何か言う前に与崎は逃げるように席を外し、「風呂沸かしてくる」とリビングを出て行ってしまった。