そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
「え、私のスマホ……ですか?」
「昨晩、七瀬さんの様子を見に行ったら鞄の中でずっと鳴ってました。七瀬さんが起きてしまうから、電源を消そうとしたんですね。そしたら……」

 言われて電源を入れてみたら、一目でドン引きするほどの着信履歴が残されていた。
 たどっていくと、最初のほうは陣からの電話で、土曜の夜に七瀬を捜してくれたときのものだ。
 陣からの不在着信は五件だったが、翌晩の宗吾からの着信は、二分おきくらいに一時間ほど続いており、SNSにも、胸騒ぎがするような内容のメッセージがたくさん残されていた。一目見て、画面を閉じてしまう類の。
 実際に七瀬は読まずに、アプリを閉じた。留守電の通知もいくつかついている。たぶん聞かない方がいいだろう。

「あんまり着信がしつこく続いたので、つい出てしまいまして……」
「えっ、宗吾さんと話したんですか!?」

 陣と宗吾の会話なんて想像もつかないが、宗吾が失礼なことを言ったのではないかと心配になった。

「ハイ……。ほんの十数秒だったと思いますが、つい非暴力(アヒンサー)に反して、彼を恫喝してしまいました」
「ど、恫喝?」

 おおよそ陣のイメージから遠い文言である。

「七瀬さんを帰らせるつもりはない――と。ほんと、すみません」

 どう反応すればいいのかわからなかったが、七瀬は苦笑した。

「陣さんがそんなことを言うくらいだから、宗吾さん、いきなり怒鳴りつけてきたんじゃないですか?」
「それはその通りなんですが、え、ちょっと待って下さい。怒鳴るのが普通のことなんですか!?」
「いつもというわけではないですが……」

 電話を取った瞬間に怒鳴られるのは決して皆無ではないから、いつも通話ボタンを押す前は、無意識のうちに心に盾を作って用心していた。
 電話口の声が普通のトーンだったときは、ほっと胸をなで下ろすのだ。
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