そのモラハラ彼氏、いらないでしょ? ~エリート御曹司の略奪愛
突然の暴力沙汰に周囲の社員たちが驚いて足を止め、すっ飛んできた警備員二人が、陣の胸倉をつかんで暴れる宗吾を羽交い絞めにし、引きはがす。
「なんとか言えよ三門! 人の恋人を寝取っておいて、そっちは無罪かよ!」
「……警備員室へ。彼はアストラルテックの社員なので、そっちに連絡して引き渡してください。僕からの報告は明日一番にします」
「承知しました」
警備員に連行されながらも、宗吾は叫ぶのをやめなかった。
「七瀬、この裏切り者! どうせそいつの金目当てなんだろ、汚ねえ女だな!」
そのまま七瀬の肩を抱いてロビーを出ようとしていた陣だが、ふと足を止めると、踵を返して宗吾のところまで歩いていった。
「陣さん……」
まったく状況がわからないままだったが、宗吾の勤めるアストラルテックは、帝鳳と関わりのある会社のようだ。
「そんなに七瀬さんに未練があるのに、なぜ付き合っている間に大事にしなかったんだ。暴言暴力、挙句の果てに浮気ときたら、どんなに心の広い女性だって逃げ出すし、むしろ逃げ出さなくてはならない。彼女は心の強い人だからここまで耐えたが、朝倉くんの仕打ちは人の心を破壊する。彼女を自由意思のある一人の人間として、対等に接したことがあるのか?」
「部外者が口出しすんな」
普段の紳士然とした様子はもう見る影もなく、険しい目で陣をにらむ宗吾は、まるで理性を失った獣のようだ。
それに対峙する陣の後ろ姿が、怒りを堪えているのがありありとうかがえる。
「部外者じゃない。残念だよ、朝倉マネージャー。帝鳳のグループ会社として、身近な人の人権すら尊重できない人物を社員として雇用していたなんて。今日のことは懲罰委員会にもしっかり報告させてもらう。いいよ、連れていって」
警備員に指示を出す陣のところまで七瀬は走り、宗吾の目をまっすぐ見つめた。
「宗吾さん、私は一人のヨギとして、あなたの傍で心と体の調和を保つのが難しいと判断して、自分の意思で離れる決意をしました。それは誰のせいでもなく、私の気持ちなんです。三門さんはそんな私を理解し、受け入れてくれました。共感してくれた上、心に安心をくれる人なんです」
「……ヨガ、ヨガって、馬鹿の一つ覚えかよ」
きっとふてくされて、そんなあてつけのような言葉が出てきたのだろう。腹が立ったりはしないが、やっぱりもう無理なんだと強く認識した。
「これ以上、三門さんを侮辱するのはやめてください。いつか宗吾さんの心にも平和が訪れるよう、心から祈っています。家に残っている私の物は、捨ててくださって構いません」
ぺこりと頭を下げ、陣に微笑みかけると、かつての恋人に背中を向けて歩き出した。
「なんとか言えよ三門! 人の恋人を寝取っておいて、そっちは無罪かよ!」
「……警備員室へ。彼はアストラルテックの社員なので、そっちに連絡して引き渡してください。僕からの報告は明日一番にします」
「承知しました」
警備員に連行されながらも、宗吾は叫ぶのをやめなかった。
「七瀬、この裏切り者! どうせそいつの金目当てなんだろ、汚ねえ女だな!」
そのまま七瀬の肩を抱いてロビーを出ようとしていた陣だが、ふと足を止めると、踵を返して宗吾のところまで歩いていった。
「陣さん……」
まったく状況がわからないままだったが、宗吾の勤めるアストラルテックは、帝鳳と関わりのある会社のようだ。
「そんなに七瀬さんに未練があるのに、なぜ付き合っている間に大事にしなかったんだ。暴言暴力、挙句の果てに浮気ときたら、どんなに心の広い女性だって逃げ出すし、むしろ逃げ出さなくてはならない。彼女は心の強い人だからここまで耐えたが、朝倉くんの仕打ちは人の心を破壊する。彼女を自由意思のある一人の人間として、対等に接したことがあるのか?」
「部外者が口出しすんな」
普段の紳士然とした様子はもう見る影もなく、険しい目で陣をにらむ宗吾は、まるで理性を失った獣のようだ。
それに対峙する陣の後ろ姿が、怒りを堪えているのがありありとうかがえる。
「部外者じゃない。残念だよ、朝倉マネージャー。帝鳳のグループ会社として、身近な人の人権すら尊重できない人物を社員として雇用していたなんて。今日のことは懲罰委員会にもしっかり報告させてもらう。いいよ、連れていって」
警備員に指示を出す陣のところまで七瀬は走り、宗吾の目をまっすぐ見つめた。
「宗吾さん、私は一人のヨギとして、あなたの傍で心と体の調和を保つのが難しいと判断して、自分の意思で離れる決意をしました。それは誰のせいでもなく、私の気持ちなんです。三門さんはそんな私を理解し、受け入れてくれました。共感してくれた上、心に安心をくれる人なんです」
「……ヨガ、ヨガって、馬鹿の一つ覚えかよ」
きっとふてくされて、そんなあてつけのような言葉が出てきたのだろう。腹が立ったりはしないが、やっぱりもう無理なんだと強く認識した。
「これ以上、三門さんを侮辱するのはやめてください。いつか宗吾さんの心にも平和が訪れるよう、心から祈っています。家に残っている私の物は、捨ててくださって構いません」
ぺこりと頭を下げ、陣に微笑みかけると、かつての恋人に背中を向けて歩き出した。