『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!






「旦那様ぁ〜! おはようございますですわーっ!!」

「なっ……!」

 ハロルドはぎょっとして目を見張る。

 初夜の翌日。キャロラインは玄関ホールの二階から、大声で彼に挨拶をしてきたのだ。
 昨晩「愛さない」と互いに宣言したのに、何事もなかったかなように、平然と。

 妻のキンキンする甲高い声は、起床して間もなくの彼の耳には刺激が強すぎた。即ち、クソうるさい。

「あ、朝から声が大きい! もっと上品にしろ!」

 抗議するように、わざとらしく耳をふさぐハロルドだったが、

「おはようございます! 旦那様! おはようございます!」

 彼女の挨拶はなおも続いた。

「旦那様、おはようご――」

「あーっ、分かった分かった! おはよう」

 何度目かの呼び掛けに、彼はやっと反応する。すると、彼女もやっと黙った。

「お前……朝っぱらからうるさいぞ。うるさ過ぎる」

「旦那様。お言葉ですが、挨拶は基本ですわ! 昨晩も貴族の義務を果たすをおっしゃいましたでしょう? たとえ仮面夫婦でも、挨拶はすべきですわ!」

「だからって、時と場合というものがあるだろうが。そんなに大声を出さなくても私は聞こえる」

「いいえ! いけませんわっ!!」
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