『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
ハロルド・ハーバート公爵は、最初の妻との間に男と女の双子の子供がいた。
姉のロレッタと、弟のレックスだ。
母親は二人を産んですぐに死亡。それからも新しい母親が定着しないまま、5年の歳月が流れていた。
キャロラインは双子と家族になれるのが密かに楽しみだった。彼女は、前世では小学校の先生になるために教育学部に通っていたのだ。子供は大好きだ。
「ふふっ、やっと出てきましたわね。わたくしが二人の新しいお継母様の、キャロラインよ。よろしくですわぁ〜!」
「はっ……はじめまして、おかあさま」弟のレックスがおっかなびっくり言う。「ぼくは、レックス・ハーバートです!」
「あらぁ〜、上手にご挨拶が出来ましたわねぇ〜! 偉いですわぁ〜!」
「えへへ。おかあさま、よろしくおねがいいたします!」
「こちらこそよろしくですわ、レック――」
「ふんっ! バッカみたい!」
和やかな二人の挨拶を、姉のロレッタが大声で遮った。
「あんた! おうたいしに、こんやくはきされたんですってね!」
「まぁ! よく知ってますわね! ロレッタは、社交界のことをお勉強しているのね。偉いですわぁ〜!」
「あんなみたいな女、あたしたちの、おかあさまじゃないわ!」
「残念だけど、今はそうかもしれませんわね。母親らしくなれるように頑張りますわ!」
「べつに、がんばらばくてもいいわ! あんたなんか大っキライ!」
ロレッタはべーっと小さな舌を出すと、
「行くわよ!」
レックスの腕を取って逃げ出した。
「あっ、お待ちなさい!」
キャロラインは弾むようにダンッと床を蹴って、
「はい、捕まえた〜!」
瞬く間に双子を捕まえた。
「うわぁ〜っ、おかあさま、すごぉ〜い!」
「なによっ! はなしなさいっ!」
「いいえ、離しません!」
キャロラインはちょっとだけ真剣な表情になって、双子をまっすぐに見つめる。
「あなたたち、これから歴史のお勉強のお時間でしょう? お教室はあっちですわよ!」
双子が逃げ出した方角と逆方向を指さした。すると、二人ともみるみるばつが悪そうに顔を伏せる。
「遊びに行くのは、お授業が終わってからですわね。さぁさ、お教室へレッツらゴーですわ!」
キャロラインは双子の手をしっかり握って教室へと歩き出した。
「おかあさま、ごめんなさい……」
レックスは自分が悪いことをしている自覚があったようで、しょんぼりとした顔で謝った。
「もうっ! はなしなさいよ! あたしは、ハーバートこうしゃくれいじょうなのよ! フォレットこうしゃくけより、みぶんが上なの!」
一方ロレッタは、なんとか継母の手を離そうと、ぶんぶんと腕を振るっている。でも、いくら力を込めても、掴まれた手は微動だにしなかった。