『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!





「どういうことなのっ!?」

 乳母のバーバラの怒声が、扉を抜けて廊下中にまで響く。

「申し訳ございませんっ!!」

 仕立て屋たちは深々と頭を下げて、怯えながら謝罪の言葉を繰り返すだけだった。
 賑やかなはずの子供部屋は、今では小さなぬいぐるみまでもが震え上がっていた。

「どうなさいましたの?」

 しばらくして、メイドに呼ばれたキャロラインが子供部屋へとやって来た。

「お子たちが怖がっていますわ。一体、何があったの?」

 入口ではレックスがビクビクと震えて、ロレッタは仏頂面でこの様子を眺めていた。継母はそっと二人の背中をさする。

「どうもこうも、ありますか」と、バーバラは大仰にため息をついた。

「子供たちの前で、そんなに怒鳴らないでちょうだい。怯えているわ」

「お嬢様方の命が危ぶまれたのです! 乳母として、守らなければなりません!」

「命?」

「そうです!」

 バーバラは得意げな顔をして、ハンカチに包まれた証拠品を勢いよくキャロラインに突き出した。

「……まち針、ね」

 ハンカチの上には、一本の細い針が置かれてあったのだ。

「この針がお嬢様のドレスに付いたままだったのです。それも、首元に! 下手をすれば命に関わりましたわ」

 バーバラはギロリと仕立て屋を睨み付ける。彼らはすくみ上がって、ひたすら謝るだけだった。

「ここはフォレット侯爵家から付き合いがあるお店ですわ。こんな目立つ場所に針を残すなんて初歩的なミスをするはずがないと思うけど……?」

「ですが、針が残っていたのは事実! これは公爵家の使用している物ではございません。となると、犯人は仕立て屋しかいないのではないですか?」
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