『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
◇
午後のおやつの時間がやってきた。
キャロラインは、中庭のガゼボのテーブルの上にお菓子と紅茶をセットして、子供たちを待ち受けていた。
「お子たち〜! 今日はお継母様がお菓子を作りましたよ〜」
「わぁっ! おかあさまが、つくったの?」
「あんた、きぞくのくせに、そんなことしてもいいの?」
レックスとロレッタは、きゃいきゃいと嬉しそうに椅子に座る。二人ともおやつの時間が大好きなのだ。
「大好きな人のためにお料理をするのは、身分なんて関係ありませんわ。今日はバターたっぷりのクッキーを作りましたの」
キャロラインの作ったクッキーは、ハートや星、動物の形までいろんな種類があって、見ているだけでわくわくした。
「いっぱい召し上がれ〜。あ、でも晩餐があるから食べ過ぎは注意ですわ〜」
「わかってるわよ! たべすぎは、おはだにもわるいのよ?」
「いっただっきまーす!」
継母の手作りのクッキーは、ちょっとだけボソボソとしてたけど、バターたっぷりでほんのり甘くてとても美味しかった。
「んん〜〜おいしい〜〜〜!」
「まぁまぁね。くちのなかが、からからになるけど」
「うっ……。ちょっと水加減を失敗してしまいましたわ。次はもっと美味しく作りますよ〜」
「しっぱいしても、さいごまであきらめない……なんだよね?」
「そうよ。レックスはよく覚えているわね。偉いわ〜!」
「えへへ。ぼくは、えらいんだ!」
「ふんっ! せいこうさせてから、もってきなさいよ!」
「たしかに、失敗作を振る舞うのは失礼だったかもしれないわね。ま、そこはお家族割引で勘弁してくださいですわ〜」
「ぼくは、いつでも、あじみをするよ!」
「あたしも、テイスティングをしてあげてもいいわ? こうしゃくれいじょうは、いちりゅうのしたをもってるの」
「二人ともありがとう。――そうだわ、今度お継母様と一緒にお菓子を作ってみない?」
「ぼくも、おかしつくる!」
「チョコレートケーキだったら、てつだってあげてもよくてよ?」
母と子の穏やかな会話は、周囲に控えている使用人たちの心を和ませた。
この屋敷で、こんなにも長閑な時間が流れているのはいつぶりだろうか。いや、初代公爵夫人が死んでからは、そんな時間はほとんどなかったのかもしれない。
双子はハロルドと一緒のときは嬉しそうにしているが、父は家にほぼいないので寂しい時間のほうが多かった。
その隙間を、キャロラインが少しずつ埋めてくれていて、双子は前よりも生き生きしだしたように見えた。