『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!





 午後のおやつの時間がやってきた。
 キャロラインは、中庭のガゼボのテーブルの上にお菓子と紅茶をセットして、子供たちを待ち受けていた。

「お子たち〜! 今日はお継母様(おかあさま)がお菓子を作りましたよ〜」

「わぁっ! おかあさまが、つくったの?」

「あんた、きぞくのくせに、そんなことしてもいいの?」

 レックスとロレッタは、きゃいきゃいと嬉しそうに椅子に座る。二人ともおやつの時間が大好きなのだ。

「大好きな人のためにお料理をするのは、身分なんて関係ありませんわ。今日はバターたっぷりのクッキーを作りましたの」

 キャロラインの作ったクッキーは、ハートや星、動物の形までいろんな種類があって、見ているだけでわくわくした。

「いっぱい召し上がれ〜。あ、でも晩餐があるから食べ過ぎは注意ですわ〜」

「わかってるわよ! たべすぎは、おはだにもわるいのよ?」

「いっただっきまーす!」

 継母の手作りのクッキーは、ちょっとだけボソボソとしてたけど、バターたっぷりでほんのり甘くてとても美味しかった。

「んん〜〜おいしい〜〜〜!」

「まぁまぁね。くちのなかが、からからになるけど」

「うっ……。ちょっと水加減を失敗してしまいましたわ。次はもっと美味しく作りますよ〜」

「しっぱいしても、さいごまであきらめない……なんだよね?」

「そうよ。レックスはよく覚えているわね。偉いわ〜!」

「えへへ。ぼくは、えらいんだ!」

「ふんっ! せいこうさせてから、もってきなさいよ!」

「たしかに、失敗作を振る舞うのは失礼だったかもしれないわね。ま、そこはお家族割引で勘弁してくださいですわ〜」

「ぼくは、いつでも、あじみをするよ!」

「あたしも、テイスティングをしてあげてもいいわ? こうしゃくれいじょうは、いちりゅうのしたをもってるの」

「二人ともありがとう。――そうだわ、今度お継母様と一緒にお菓子を作ってみない?」

「ぼくも、おかしつくる!」

「チョコレートケーキだったら、てつだってあげてもよくてよ?」

 母と子の穏やかな会話は、周囲に控えている使用人たちの心を和ませた。
 この屋敷で、こんなにも長閑(のどか)な時間が流れているのはいつぶりだろうか。いや、初代公爵夫人が死んでからは、そんな時間はほとんどなかったのかもしれない。

 双子はハロルドと一緒のときは嬉しそうにしているが、父は家にほぼいないので寂しい時間のほうが多かった。
 その隙間を、キャロラインが少しずつ埋めてくれていて、双子は前よりも生き生きしだしたように見えた。
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