『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
「お嬢様もお坊ちゃまも、喉が渇きましたでしょう? さぁ、お茶をどうぞ」
乳母はメイドたちに目配せをして、熱々の紅茶を淹れさせる。ちょうどクッキーが口の水分を吸い取ったところだったので、ナイスタイミングだ。
「奥様も、どうぞ」
乳母みずから給仕をする。公爵夫人は微笑みながら受け取った。
二人の笑顔と笑顔がぶつかる。本来なら穏やかな空気になるのだろうが、彼女らの間には得体の知れない不安定なものが宿っていた。
「あら、ありがとう」
キャロラインは、ゆっくりとおティーカップに口つけた。
バーバラの瞳がギラリと光る。
キャロラインの口元の両端が微かに上がった。
――ごくん。
茶色い液体が彼女の喉をするりと通った。
「あら、美味しい」
キャロラインは笑顔でごくごくと飲み干す。
「ほんのりとした渋みがクッキーに合いますわね〜」
「そうですか」
乳母はぎこちなく笑った。
キャロラインはバーバラの計画を見抜いていた。今日の公爵夫人へのお茶の中に、毒を仕込んでいたのだ。
彼女がそれを察知すると、すぐさまそれを入れ替えた。
中身は蒸留酒だ。微かに香るツンとした刺激が、乳母の毒薬にそっくりだった。
(紅茶に蒸留酒は合いますわね。……っていうか、本当に入ってる?)
全て飲み干して、彼女は初めて違和感を覚えた。今しがた飲んだ紅茶からは、アルコールの風味は感じなかった……気がする。
キャロラインがはてと首を傾げていると、
「きゃあっ! お嬢様! お坊ちゃま!」
ロレッタとレックスが、二人揃ってバタンとテーブルに突っ伏していた。