『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!


「お嬢様もお坊ちゃまも、喉が渇きましたでしょう? さぁ、お茶をどうぞ」

 乳母はメイドたちに目配せをして、熱々の紅茶を淹れさせる。ちょうどクッキーが口の水分を吸い取ったところだったので、ナイスタイミングだ。

「奥様も、どうぞ」

 乳母みずから給仕をする。公爵夫人は微笑みながら受け取った。

 二人の笑顔と笑顔がぶつかる。本来なら穏やかな空気になるのだろうが、彼女らの間には得体の知れない不安定なものが宿っていた。

「あら、ありがとう」

 キャロラインは、ゆっくりとおティーカップに口つけた。
 バーバラの瞳がギラリと光る。
 キャロラインの口元の両端が微かに上がった。

 ――ごくん。

 茶色い液体が彼女の喉をするりと通った。

「あら、美味しい」

 キャロラインは笑顔でごくごくと飲み干す。

「ほんのりとした渋みがクッキーに合いますわね〜」

「そうですか」

 乳母はぎこちなく笑った。
 キャロラインはバーバラの計画を見抜いていた。今日の公爵夫人へのお茶の中に、毒を仕込んでいたのだ。

 彼女がそれを察知すると、すぐさまそれを入れ替えた。
 中身は蒸留酒だ。微かに香るツンとした刺激が、乳母の毒薬にそっくりだった。

(紅茶に蒸留酒は合いますわね。……っていうか、本当に入ってる?)

 全て飲み干して、彼女は初めて違和感を覚えた。今しがた飲んだ紅茶からは、アルコールの風味は感じなかった……気がする。

 キャロラインがはてと首を傾げていると、

「きゃあっ! お嬢様! お坊ちゃま!」

 ロレッタとレックスが、二人揃ってバタンとテーブルに突っ伏(つっぷ)していた。

< 53 / 132 >

この作品をシェア

pagetop