『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
「さて、お前たちの処分だが……」
ハーバート公爵の厳粛な低音が場を凍り付かせる。
「致死性のない毒薬ではあったが、公爵家の人間に危害を加えようとしたことは事実だ。そして数年に渡る横領。さらに、罪を公爵夫人になすりつけようともした。余罪もある」
ハロルドは己への激しい怒りが再び湧き上がってきたが、ぐっと我慢をして続ける。
「本来なら、騎士に捕らえさせて裁きを受けてもらうところだが……。お前たちには、私の子供たちを育ててくれた恩がある。なので、処分は『追放』のみにしておこう。当然、横領した金はきっちり回収させてもらう」
「はっ……」
バーバラは全身の力が抜けていくのを感じた。カチカチと視界が点滅して、頭が割れるように痛い。
命は助かったものの、彼女の社交界での死は確定したということだ。
普通は、仕えている屋敷を辞めるときには推薦状をもらう。
しかし追放だと、そんなものは手に入らない。これは、その屋敷で何か問題を起こしたということ。
しかも、社交界の噂は速い。きっと一週間もしないうちに、公爵家を追放されるほどのことをやってしまったという事実が広まるに違いない。
そうなったら次の仕事はないし、社交界の居場所もない。夫の事業が傾くのも必至だろう。
ハロルドはおもむろに立ち上がって、窓辺へと歩いた。もう、顔も見たくもないという意味だ。
「すぐに荷物をまとめて出ていけ」
そして、これまでにないくらいの冷ややかな声音で静かに言った。彼の感情のこもっていない低音は、キャロラインにはどこか悲しく聞こえたのだった。
◇
「旦那様、ここにいましたの。夜風は身体に毒ですわよ」
その日の夜、キャロラインはバルコニーで一人佇むハロルドに声をかけた。
彼の背中が寂しそうで……つい、話しかけてしまったのだ。