『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!





「お子たち〜! ようこそ、おバーベキュー大会へ!」

 庭には、香ばしい匂いが広がっていた。
 それは屋敷の中まで届いていて、授業中だった双子も気を散らして、そわそわと外の様子を(うかが)っていたのだ。

 その光景を前にして、双子の丸い瞳が水に映った光みたいにキラキラと輝きだす。

 石で作った簡易的な(かま)。焚き火に照らされた上には、焼き網が熱せられていた。
 隣のテーブルには豪華な食材が並べられている。肉、魚介類、野菜。そしてデザートのマシュマロも!

 双子はこれから始まる(うたげ)を想像すると、ワクワクが止まらなかった。

「うわぁ〜! すご〜い!」

 レックスが嬉しそうにトテトテと焼き網に近付く。

「バーベキューってなによ?」

「おバーベキューは、お外に皆で集まってお肉やお野菜を焼いて食べるのよ。とっても楽しいですわよ〜」

「また、おこさまっぽいわね」

 と言いつつも、ロレッタは早く始めたくてうずうずと食材を見ている。

「ぼくが、やく!」

 我慢できなくなったレックスがトングを掴もうとすると、

「ふっふっふ……。その前に……」

 キャロラインは、優しく継子の手を押さえて動きを制止させた。

「どうしたの、おかあさま?」

 双子はなんだろうと首を傾げる。
 継母はちょっともったいぶった素振りを見せたあと、

「じゃーーーんっ!!」

 今朝拾ったトカゲを双子の前にドンと突き出した。

「本日のメインディッシュはこちらですわ〜!」

「……」

「……」

 双子は、初めて見る大トカゲに目をぱちくりさせる。青い鱗がピカピカしていて、宝石みたいに輝いていた。

「トカゲさんだーっ!」

 興奮するレックス。男の子はこの手の類のものが大好きなのだ。

「え……。これ、ほんとうにたべるの?」

 ロレッタは、ちょっとだけ引いていた。

「おモチのロンですわ! あなたたち、もっとおタンパク質を取らないといけませんわよ! 今日は、お継母様(おかあさま)と一緒にお肉をたくさんいただきましょう〜!」

 キャロラインは双子に有無を言わさずに、拾ったトカゲをポンと金網の上に放り込んだ。
 あとは、焼けるまで野菜や魚介類を食べながら――……、
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