『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

「お安い御用ですわ〜。あ、でも、屋敷の主の許可を取らなければなりませんわ。――というわけで旦那様、この子、飼って良いですかぁ〜?」

「誰が『この子』だ。我を(あが)(たてまつ)れよ」

「あ、あぁ。まぁ、普段は小さいサイズなら飼えるか。念のため、巨大化した用の小屋も作っておこう」

「我はペットではない」

「うわぁ〜、ドラゴン、かうんだぁ〜!」

「あたしも、おせわをしてあげてもいいわ?」

「責任を持って飼うんだぞ。生き物なんだからな」

「「「はぁ〜〜い!」」」

 キャロラインと双子は、元気よく返事をした。

「おい……」

 一匹だけ置いてけぼりにだれたドラゴンは、疎外感が押し寄せて寂しく思った。

「では、決まりですわ〜! よろしくね……えっと、お名前はなんと呼べばよろしいの?」

「我の名か、好きに呼べ。他の者からは――」

「タッくん!」

 レックスの大声がドラゴンの言葉を遮った。彼はキラキラと瞳を輝かせながら、嬉しそうに弾んだ声音で続ける。

「タンパクしつで、タンホイザーだから、タッくん、だよ!」

 彼のキラキラオーラがパラパラと皆に降りかかった。幸せな空気がほわんと広がる。

「まぁ! 素敵なお名前ね!」

「良いじゃないか」

「まぁまぁね」

 それぞれ称賛したあと、

「よろしくですわ、タッくん」

 キャロラインは代表してタッくんと無理矢理握手をした。

「我はそのような軟弱な名前ではない……」

 こうして、ハーバート公爵家に、新しい家族ができたのだ。
 


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