『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!

 ハロルドは驚愕のあまり、ロボットみたいに身体を硬直させす。もう思考が追いつかなかった。

「おまっ……」

 数拍して、やっとのことで声を絞り出す。

「お前っ、なんだその動きはっ! 悪魔()きか!?」

「おダンスですわっ!」

「っ……」

 ハロルドの中にある、般常識が追い付かない。唖然として、奇妙な動きをするキャロラインを見ているだけだった。

「王宮のおパーティーが楽しみですわ〜。早く、わたくしの素ン晴らしいおダンスを披露したいですわぁ〜!」

 呆然とした彼は、妻のとんでもない発言に弾かれるように目を見開く。

「まっ……! まさか、夜会でこのダンスを踊るつもりか!?」

「そうですが、何か?」

 キリッと答えるキャロライン。

「『何か?』 じゃねぇよ! いいか、このムーンウォークとやらと、ロボットダンスとやらは絶対に踊るなよ!」

「えぇ〜っ! なんでですかぁっ!? せっかく生まれ変わったわたくしの大舞台ですのにぃ〜」

「駄目だったら、駄目だ! こんなの、悪魔憑きと思われて最悪火炙(ひあぶ)りだぞ!」

「むぅー。練習すれば、誰だってできますのに……」

「はぁ……」

 ハロルドは大きなため息をついて、

「いいか? 夜会の当日は絶対に私から離れるな! お前が馬鹿な真似をしないか、隣でしっかり見張っておかないとな」

「あら? 旦那様、そんなにわたくしと一緒にいたいのですか? もう〜、レックスに似て甘えん坊さんさんだからぁ〜!」

「ちっ……」

 ハロルドの顔がみるみる真っ赤になって、

「ちげぇよっ!!」

 彼らしくない大音声の叫びが、ダンスヒールを飛び越えて屋敷中に響き渡った。

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