『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!





 伝説のドラゴンの大ニュースは、もちろんハーバート公爵家にも伝わっていた。

「良いですかぁ〜? リピートアフタミー?」

「「「はい、奥様!」」」

「『我々は、ドラゴンなんて知りません』! はいっ!」

「「「我々は、ドラゴンなんて知りません!」

「グゥ〜ッド! 『公爵家にはドラゴンはおりません』! はいっ!」

「「「公爵家にはドラゴンはおりません!」

「グ、グ、グゥ〜ッド! ザッツライト! センキュー!」

「バカじゃないの」

 ロレッタの凍えるような冷たい声が響いた。使用人たちは笑いをこらえている。

 ハロルドは屋敷の従者たちに箝口令を出した。
 タッくんのことが露呈したら、大騒ぎになるのは必至。なのでハーバート家で団結して、何が何でも彼を守らなければいけなかった。

 従者たちも、既にマスコット的存在になっている可愛いタッくんを、見世物にはしたくなかった。国王の政治の道具なんかには絶対にさせない。

 今日はキャロラインが『緊急時の対応の説明会』と称して、屋敷中の使用人たちを一箇所に集めていた。
 そこで、『もしドラゴンのことを聞かれたらどう答えるのかシミュレーション』をしていたのである。

 大人たちが一斉に同じセリフを復唱しているのは滑稽(こっけい)なものがあった。更には5歳の子供に冷静に突っ込まれているのが面白くて、彼らはこの状況を楽しんでいた。

 ただ一人、キャロラインだけは大真面目であった。彼女は常に全力疾走なのである。
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