『あなたを愛することはございません』と申し上げましたが、家族愛は不滅ですわ!
◇
伝説のドラゴンの大ニュースは、もちろんハーバート公爵家にも伝わっていた。
「良いですかぁ〜? リピートアフタミー?」
「「「はい、奥様!」」」
「『我々は、ドラゴンなんて知りません』! はいっ!」
「「「我々は、ドラゴンなんて知りません!」
「グゥ〜ッド! 『公爵家にはドラゴンはおりません』! はいっ!」
「「「公爵家にはドラゴンはおりません!」
「グ、グ、グゥ〜ッド! ザッツライト! センキュー!」
「バカじゃないの」
ロレッタの凍えるような冷たい声が響いた。使用人たちは笑いをこらえている。
ハロルドは屋敷の従者たちに箝口令を出した。
タッくんのことが露呈したら、大騒ぎになるのは必至。なのでハーバート家で団結して、何が何でも彼を守らなければいけなかった。
従者たちも、既にマスコット的存在になっている可愛いタッくんを、見世物にはしたくなかった。国王の政治の道具なんかには絶対にさせない。
今日はキャロラインが『緊急時の対応の説明会』と称して、屋敷中の使用人たちを一箇所に集めていた。
そこで、『もしドラゴンのことを聞かれたらどう答えるのかシミュレーション』をしていたのである。
大人たちが一斉に同じセリフを復唱しているのは滑稽なものがあった。更には5歳の子供に冷静に突っ込まれているのが面白くて、彼らはこの状況を楽しんでいた。
ただ一人、キャロラインだけは大真面目であった。彼女は常に全力疾走なのである。