それらすべてが愛になる
 「もちろん問題はないですよ。でも世間の人はどう思うでしょうね?
 六年前といえば十八歳はまだ未成年で、二回りも年上の資産家の男性と結婚して一年あまりで離婚。そしてその離婚歴を隠した上で、数年後には大企業の御曹司の婚約者におさまっている。
 結婚と離婚を繰り返す若き情婦――なんて読者の興味をそそるには十分過ぎると思いませんか?そして、そんな女性を婚約者にしたとなれば、御曹司の評判はどうなるでしょうね?」

 「そんな、やめてくださいっ」

 まさか、週刊誌か何かに売り込むつもりなのだろうか。

 自分がどう書かれようがどう思われようが構わない。
 けれど、自分の過去のことで洸に迷惑がかかるのは、自分のことが好き勝手書かれることより耐えられなかった。

 「私の調査方法や多少の誇張表現など大した問題にはなりません。これが編集部でゲラ原稿になったときは、もっとセンセーショナルな見出しと内容になっているはずですから」

 ぐらりと足元が揺らぐ感覚。

 しっかり意識を保っていないとふらついてしまいそうだった。


 「……何が目的なんですか?」

 本当に売り込むのが目的なら、すでに雑誌の編集部に持ち込んでいるだろう。

 でも、そうはせずに自分に接触してきたのは、何か別の理由があるはずだと清流は思った。やはりお金だろうか。

 「実は、僕はある人から工藤さんのことを調べてほしいと依頼されたんです」

 (………ある人?)

 「あぁ、私はその人から手付金をもらってますから、お金が目的ではありませんよ。
 あなたが取引に応じてくだされば過去を暴露することはありません。そして取引が成立すれば私はさらに成功報酬を手にすることになっていますから、まさにWIN-WINというわけです」

 「……取引?取引ってなんですか?」

 「依頼人の要求は実にシンプルです。
 加賀城洸さんとの婚約関係を直ちに解消し、彼の前から姿を消してもらいたい」

 ―――姿を、消す?

 「一切の痕跡を残さずに、彼の前から消えてもらいたい。
 それが依頼人からの条件です」

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