それらすべてが愛になる
 「今日これから何か予定あるか?」

 「?いえ、特にないですけど」

 はじかれた額を押さえつつ答えると、洸は少しほっとしたような表情をした。

 「オーダーしていたスーツが出来上がったから取りに行くんだけど、一緒に来ないかと思って。俺の用事はそれだけだから、他に清流が行きたいところがあれば行くけどどこかある?」

 突然の提案に驚いて、え、とかあ、とか言葉にも満たない音しか出てこなかった。まるでデートの誘いのようで頭の中が騒がしい。

 正直、行きたいところと言われても特に思い浮かばなかった。
 行きたいところがないというよりも、洸と過ごせるのならどこでもいいと言ったほうが正しい。

 (……あっ、)

 そのとき、ふっとここに引っ越してきた翌日にした会話を思い出した。

 「あの、行く場所はどこでも大丈夫なので加賀城さんが運転する車に乗ってみたいです」

 「あぁ、そういえばそんな話したよな。いいよ車で行くか」

 洸は予想外だったのか一瞬不思議そうにしてから、納得したように頷いた。


 『じゃあ今度な、助手席に乗せてやる』


 あんな何気ない会話を、洸も覚えていてくれた。
 そのことだけで嬉しい。

 「外に車回しておいてもらうように連絡しておく」

 そう言って踵を返した後ろ姿を見つめながら、清流は自分がとてもラフ格好をしていることに気づいて、大急ぎで自分の部屋へ着替えに走った。

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