それらすべてが愛になる
 「そんなに運転が心配?」

 「え?」

 「さっきからずっとこっち見てるから」

 「いえ全然っ、すごく快適です」

 速度は早いけど、急発進や急ブレーキなんて一度もない。大きな車なのに揺れもほとんど感じなかった。

 「ならよかった。下手だと疑われたままかと思った」

 「…その節は失礼なことを言ってすみません」

 「それはいいけど、どうした?今日は何か静かだな」

 言われてみると、車に乗ってからはずっと隣りの洸ばかりを見ていて、話すことを忘れていた。

 「えっと…運転の邪魔になるかなと思って」

 「何で。槙野とはいろいろ話したんだろ」

 洸は少しムッとしたように目線だけ向ける。
 確かに槙野が運転する車に乗せてもらったときは、マンションに着くまでの間いろんなことを話した気がする。あのときは、こんなに緊張したりしなかった。

 たぶん緊張の正体は、慣れない密室空間と、その近さゆえにいろんなことが気になってしまっているせい――けれどそれを正直に言うわけにはいかず、清流は洸から目を逸らして正面を見ることしかできない。

 そうしてしばらく走っていると、前の車のハザードランプが点灯して、車は速度を落とし緩やかに止まった。

 「やっぱり少し混んでるか、しばらく動かなそうだな」

 目線を上げると、注意喚起の看板には数キロ先の渋滞が表示され、赤色に明滅していた。

< 173 / 259 >

この作品をシェア

pagetop