それらすべてが愛になる
 『どうして、私なんですか?』

 『それは、言わない。たぶん言ったら怒るだろうから』

 君の境遇に同情して衝動的に結婚を持ちかけた、とは言っていいものが迷って結局曖昧にごまかした。

 腹を立てるか、彼女のプライドを傷つけるか。少なくとも好意的とはいかないはずで、それならばいっそギブアンドテイクの関係と思われた方が都合がいい。

 再会してから洸の素性を知った後も、清流の態度には良くも悪くも変化はなく、妙な媚も売ってこない。
 気を使われることもなく、こちらも言葉の裏を探る必要もない。

 これまで洸に近づく女性といえば、洸の出自やステータスに惹かれているか、そうでなければ何らかの取引目当てか。
 顔や態度から透けて見えるそれらに辟易されられてきた洸は、すっかり愛や結婚というものに対して冷め切っている。

 中には純粋な好意を向けていた女性もいたかもしれないが、相手からの見返りのない想いを盲目的に信じられるほど、洸の恋愛経験は豊かではない。

 これまでのような女性との見合いを繰り返すくらいなら、清流くらい気楽な存在と結婚した方が自分にとってもメリットだと感じた。


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