優しくしないで、好きって言って

「あ、今日髪巻いてんじゃん」

「……っ」


 考え事をしていたら落とされた声に、ぴくっと背筋が跳ねた。


「似合ってんね」

「……あ、ありがとう」


 もう……。そういうこと、すぐ言うんだから。

 これをわかってやっているのなら、れっきとした罪よ、罪。


「ん?」

「別にぃ?」


 人の気も知らない天然タラシを、気づかぬうちに軽く睨みつけていたらしい。

 私は「そんなことより」と切り替えるように言って、首を傾げるその人の服の裾をクイッと引っ張った。


「今日は頼んだからね」


 実玖留と話している篠原くんの方を見ながら、小声で念を押す。

 とその時、「なんだー、彼女いたんだ。残念」なんて声がどこからか聞こえてきた。

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