優しくしないで、好きって言って
──親父は昔からそういう人だった。
言葉が少なく、あまり感情を表に出さない。
だけど、家族をちゃんと大事に思ってくれてるのは、なんとなく伝わってた。
少し遅れたとしても、誕生日には必ずプレゼントをくれる。
どこで知ったのか、それは話したこともないはずなのに、いつも決まって俺が欲しいと思っていた物だった。
わかってたのにな……あの人がとんでもなく不器用な人だってことくらい。
不器用だけど、情に熱く、頑固なくらい真っ直ぐで。
そしてなにより、自分の仕事に誇りを持っている。
初めは決められた未来だったかもしれないが、親父はいつだって命を優先して、そこに人生をかけてきた。
地位とか、名誉とか、そんなもののためじゃなくて。
ただ、目の前の人を救うために奔走していた。
そんな大きな背中に、俺は憧れたんだ。
その時、スッと何かが胸を降りていった気がした。
「母さん、ありがとう。……今度親父に会ったら、ちゃんと心のままに全部、伝えてみるよ」
綾城家の長男としてではない。
俺は綾城瑛大として、あなたや母さんのような医者になりたいんだと。