優しくしないで、好きって言って

「っ! うん」


 返事する前にやってきた手の感覚に、身体がビクッと反応する。

 握られた手……というよりは、絡められた指。


 ……相変わらず、この男はスマートなんだから。


 その巧妙さに感心しつつ、きゅんとした心で握り返すと、


「やっと七瀬と本物のデートできたな」


 覗いてきた大人っぽい視線に、更にドキリとしてしまった。


「そ、そうね」


 ドッ、ドッ。心臓が軽快な音を奏でてる。

 念願の初デート。

 意識すると、やっぱりこそばゆい。


 まさか私と瑛大がこんな関係になるなんて、少し前の私が知ったらびっくりするだろうな。

 そんなことを考えながら、えい、と自分よりも逞しい腕に寄り添ってみる。

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