優しくしないで、好きって言って
「……まあ」
……なるほど。
「なにその顔」
「別にぃ?」
……ママに気を遣ってくれた、ってことなのかな?
そんなことを考えながら、ほんの少し上がる口角。
見た目は見違えるほど大人っぽくなったっていうのに、まだにんじんが苦手だなんて……瑛大には悪いけど、ちょっとおかしい。
──そうやってしばらく話をしていたら、気づけば時計の短針は7を指そうとしていた。
窓の外に広がる空の色はもう、すっかりと薄暗くなっている。
瑛大は荷物を手に取ると、ぺこりと私たちに頭を下げた。