優しくしないで、好きって言って

「貸して?」


 すぐ後ろから聞こえてきた声に促され見上げれば、この手に持っていたはずのドライヤーは瑛大の手に。


「い、いいよ悪いし」

「はい、七瀬はここ」

「……」


 流されるままに椅子に座らされてしまった。


「じゃ、乾かすね」


 その言葉を合図にドライヤーの音が鳴り、そして、瑛大の指が私のミルクティーブラウンの髪に触れた。

 瞬間、ぴくんと跳ねた身体。


「……熱かった?」

「ううん大丈夫……」


 バカ。そうじゃないんだってば。

 答えるとすぐ、瑛大の止まった手が再び動いた。

< 75 / 272 >

この作品をシェア

pagetop