優しくしないで、好きって言って

「そういえば、ママは?」

「ああ、仕事部屋にこもるって」

「そう……」


 ん、ってことは──。


「七瀬も座る?」

「……あっ、ううん。髪乾かさなきゃ」


 ママは一度仕事部屋にこもるとなかなか出てこない。

 パパもまだ連絡がないし暫く帰ってきそうにない。

 つまり、だ。


 ──瑛大と私は、寝巻き姿で二人きり。


 心臓の音が急激に加速する。

 長く考えずとも浮かんだ事実にごくりと息を呑んでから、私はいそいそとドライヤーの準備を始め──。


「俺がやろうか?」

「えっ」


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