優しくしないで、好きって言って

『七瀬ちゃんの髪って、なんでそんなに綺麗なの?』


 髪なんて、褒められたことなかった。

 みんなと違って、嫌だった。


 だからある日突然そんなことを言われた時は、純粋に驚いた。


『私の髪、変じゃない?』


 今は褒められることの多くなったそれも、幼い子どもの純粋な目には〝異質〟で。

 みんなと違う私はいつも、変だと言われてきた。

 そのせいで、私の髪は変なんてだって、そう思い込んでいた。


 だからずっとずっと、大嫌いだったのに──。


『なんで? 髪も目も、宝石みたいじゃん』


 そんな私を変えてくれた、魔法の言葉。


 その瞬間ぶわっと風が吹き、世界の色が180°変わって見えた。


 途端にキラキラと輝き出した世界。

 それと同時に、私の目は釘付けになっていた。

 私をまっすぐに見つめる、屈託のない優しい笑顔に。


 そう──間違いなくこの時私は、初めての恋に落ちたんだ。

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