優しくしないで、好きって言って

「七瀬さ、俺のことちょっと警戒してたでしょ?」

「……」

「バレてないと思ってた?」

「っ!」


 ドキリと胸が騒ぎ出した。

 そんな私の顔を容赦なしにニヤリと見つめてくる、肉食獣の瞳。


「結構傷ついたな、俺」

「うっ……それは……っ、ごめんなさい」

「冗談」


 ……え?


「怒ってないから」

「でも──」

「8年も経ってんだ。むしろ七瀬の反応のが普通だろ?」


 瑛大はそう言って、私の頭をそっと撫でた。


「その代わり、今度は七瀬のことも教えてよ」

「……うん」


 私はゆっくりと、確かめるように頷いた。

 すると早速ぽつり、問いかけてきた瑛大。


「久栖さん、だっけ」

「……?」

< 84 / 272 >

この作品をシェア

pagetop