虹橋の先へ
「え……っ」
驚いて反応できないオーリーにクスリと笑うと、照れたのかさっさとドアを閉めてしまった。
(最初で最後、かな)
叔父にそう呼んでもらえるのは。
それはからかいとも、もちろん女性扱いとも違う。
何だか、初めて認められたようですごく嬉しい。
(一人は緊張するな。……でも)
やっと、ここまで来た。
正確には、この前訪れたばかりだけれど、そう思うのだ。
ニールに逢いに。
翡翠の森を抜けていく。
《いらっしゃい、オーリー》
突然話しかけられて、辺りをきょろきょろしても誰もいない。
辺りといっても狭い車内だ。
遅れて護衛車が走っているはずだが、御者の他にはオーリー一人だけ。
《キミに会えるのを楽しみにしててんだ。ずっと、ずーっと。ボクはもちろん、ニールもね。正確には今のキミに、かな》
「今の私って、どういうこと?というか、あなたは……」
《ふふ。そうしてすぐに応えてくれるあたり、思ったとおりの大物だ。うん、いいね》
思わず普通に返事をすると、声は驚きながらも今にも吹き出しそうになっているように聞こえた。
《ううん、褒めてるんだ。そうこうなくっちゃ。だってほら、雨はもう降ったけどさ》
顔に出ていただろうか。
だとしても、彼はどこから見ているのだろう。
いや、男の子のような気もするし、女の子だとしてもおかしくない。
ただ、高めの可愛らしい声だとしか言いようがなかった。
《その先、未来へと架けるにはまだまだ踏ん張りが必要だ。でも、その感じなら大丈夫》
「よく分からないけど……ええ。私、行動力はあるつもりよ」
急に声の調子が穏やかになり、ドキッとしたけれど。
それだけは主張しておくと、クスッと笑ったきりもう何も聞こえない。
(何だったのかしら。空耳?……だとしても)
《空耳じゃないよ!現実。……って、ああ。懐かしいな。本当に会えてよかった》
緑の葉が雨を受けてキラキラと輝き、目を細めた。
(……うん。私も嬉しい。誰だか分からないけど……)
ありがとう。
そう言わせて。