九條くんと、15分。
九條くんが、ふいに振り返った。
「…………」
今……目が、合った?
──え。
時間が止まった。
九條くんが、私を見てる。
たったそれだけなのに。
心臓がありえないくらい跳ねた。
「……う、嘘」
目が合っただけでも、心臓は過労気味だっていうのに、九條くんはそのまま何も言わずに来た道を戻ってくる。
真っ直ぐ、私を見据えたまま。
ど、どうしよう……何が起きてるの?
口をパクパクさせながら、脳内で独り言を漏らす私。
そして。
そんな私の目の前まで来ると、九條くんはゆっくりとイヤホンを片方外した。
「……あのさ」
低い声が、朝の空気にこぼれる。
「……毎朝、俺の後ろ歩いてるよね?」
「……っ!!」
終わった。
私の15分。
今日で、完全に終わった。


