九條くんと、15分。

***

──朝8時。

おはようございます。
今日もやってまいりました、朝8時。

癒しの15分が幕を開けようとしています。


玄関のドアを押し開ければ、7月にしては爽やかで涼しい風が私の髪をなびかせた。

まだ、朝は過ごしやすい。


そして──。


「よし、今日も通常運行……!」


少し前に九條くんを見つけて、口元が緩む。
先を歩く九條を追いかけるように、私も少し遅れて歩き出す。

今日もイヤホン。

今日もゆるく着崩した制服。

顔は見えないけど、きっと今日も無表情。

今日も、いつも通り。

……なのに。


「……?」


いつもより、少しだけ歩く速度が遅い気がする。

なんだろう。
今日は少しだけ、九條くんの背中が近くに感じる。

気のせいかな。

気のせいだよね。

そう思いながら歩いていると。


「……っ」

九條くんが、信号の手前で立ち止まった。

赤信号。

私も少し離れたところで立ち止まる。
一緒に信号待ちするわけにはいかないし、


いつもこうして、付かず離れずの距離を保っている。

信号待ち、九條くんはスマホに視線を落とす。

私はその横顔を盗み見る。

いつもの光景。

いつもの15分。

──あと少しで青になる。

そう思った、そのとき。

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