九條くんと、15分。
九條くんが家を出てから、学校に着くまで。

──約15分。

そんな九條くんを、私は毎朝15分だけ眺めている。
それが私の、幸せな時間。


日によって少し変わるヘアセット。

ゆるい制服の着こなし。

歩く速さ。

信号待ちでスマホを見る回数。

たまに寄る行きつけのコンビニ。

髪を触る癖。

不意に振り返って、目が合う寸前の綺麗な横顔。

知っていることは、日々少しずつ増えていく。

──もちろん。
本人には何ひとつ聞いていないどころか、話したことすらないんだけど。


最近は、毎日イヤホンでどんな音楽を聴いているのか気になって仕方ない。

……って。

我ながら、ちょっと怖いな。


「……ストーカーじゃん」

以前、親友の八愛(やえ)ちゃんにそう言われたことを思い出して、一人苦笑いを零す。

否定はできない……けど。


「ストーカーじゃなくて、一途なファンなの!」

なんて、胸を張って答えたら八愛ちゃんには呆れた顔をされたっけ。


それでも、私はこの時間が好き。

九條くんと話したいわけじゃない。
付き合いたいなんて、もっと贅沢なことも考えていない。

ただ。

少し離れたところから、九條くんの背中を見るだけで、あぁ今日もかっこいい、今日も1日頑張るぞー!って活力になる。
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