九條くんと、15分。
***


「で?」

昼休み。

お弁当を食べ終わった八愛ちゃんが、頬杖をつきながら私を見る。

「で、とは?」

「今日の九條先輩」

「……っ」

あ、危ない。
飲んでたお茶を吹き出すところだった。


「今日の……って」

「だから、朝の15分で新しい発見はあったか聞いてんの!」

「今朝は、新しい発見ってほどじゃないけど、散歩中のワンちゃんに懐かれててね」

「ワンちゃん……?」

「そう!動物って本能的に人間の善悪が分かるって言うし、妙に納得しちゃったというか」


目線をあわせて、少し目を細める九條くんがかっこよすぎて目に毒だったというか。

「それはつまり、九條先輩が"善"だってこと?」

「それはもちろん!すごく優しい人だもん」

「ふぅん……」


そう言いながら、八愛ちゃんは一瞬考えるような素振りを見せる。


「何回も聞くけど、話したことは?」

「ない」

「会釈程度も?」

「ない」

「目が合ったことは?」

「……たぶん、ない」

「なら、どうして"すごく優しい"って分かるの?」


不思議そうに首を傾げて私をジッと見つめる八愛ちゃん。


「……それは」

言葉が止まる。

なんとなく、私だけが知ってる九條くんの秘密にしたくて、そういえば八愛ちゃんにも話したことがなかった。

私が九條くんを好きになったのは、他の女子たちみたいに単に顔がタイプだからなんて理由じゃない。

──あの日。

偶然にも九條くんの"優しさ"を見てしまったからだ。
< 4 / 11 >

この作品をシェア

pagetop