エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 シカゴの摩天楼が見える景色ももう眼には入ってこない。席に座って莉桜は煽るようにソフトドリンクを飲んだ。ソフトドリンクなのが様にならなくて悔しいところだが、明日仕事なのでは仕方ない。
「帰ります」

 莉桜が席を立つと、五十里は莉桜の腕を掴んで、エレベーターへと向かった。
(何よ!? まだ怒っているんだから!)
 エレベーターの壁際で五十里は莉桜を腕の中に覆う。思いもかけず壁ドンな状況になって莉桜は鼓動が大きくなってしまっていた。整った五十里の顔が近い。

「参ったな。本当に惚れ直す。かっこよすぎるな、俺の彼女は。勇ましくてかっこよくて、可愛い」
「私、怒ってますから」
「ふうん?」
 ぷりぷりと怒っている莉桜の姿にすら五十里は嬉しそうなのだ。

「なんなんですか!? 彼女は!」
「さっきも言った。取引先だよ。しかもこちらの現地会社の役員の単なるアシスタントに過ぎない。見た目は派手で取り巻きも多いようだがな」
「だって、名前で呼んでました!」

 五十里はにっと笑う。とにかく莉桜が怒っても全然こたえていないのだ! さっきから嬉しそうですらある。
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