エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「君も知ってるだろう? こっちではファーストネームで呼び合うことも多いんだよ。じゃあ、莉桜も名前で呼べよ。その権利は君にはあるだろう」
 そう返されて、莉桜はぐっと押し黙ってしまう。確かにその通りだ。

 五十里は莉桜に名前が呼んでもらえるとわくわくとした表情を隠しもしない。
「た……武尊、さん」
「ん? 今度からそうやって呼んでくれ」
 嬉しそうに頬を指の背で撫でられてしまうと、莉桜は何も言い返すことができなかった。

 悔しいが、本当に五十里は端正過ぎるのだ。
(顔が……いいのよっ)
 五十里も莉桜にはベタ惚れなので似合いといえば似合いな二人なのだった。

 五十里は莉桜の手に指を絡めて、エレベーターを降り、部屋へと莉桜を連れていく。
 部屋の中に入ったら、背もしなりそうなほどに強く抱きしめられた。
「莉桜……」
 狂おしいように名前を呼ばれて、莉桜も五十里の背中に腕を回す。

(私の……私の恋人だもの)
 どこにも行かないで誰も見ないで、私のことを見てほしいなんて、莉桜はこんな気持ちになったことはない。
 部屋の中はとても静かで先程までの賑やかな雰囲気はまるで別の世界のようだ。
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