エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 初めての通話はなんだかくすぐったいような気持ちだ。
『よかった。客室乗務員の訓練というものは今日初めて見たんだが、なかなかに迫力のあるものだな』
「そうですね。本番同様にやらないと意味がないんです。実際その場になった時自然に身体が動くぐらいに叩き込まれます」

『ああ、何度もやっているって感じだったな』
「訓練は年に何度かありますからね。客室乗務員はお客様の命をお預かりしていますから」
『うん。その真剣さは感じたよ。明日は?』
「明日は新機種でのサービスの訓練です」
 今日の訓練は非常時の訓練だったので、明日はサービスの訓練なのだ。

『訓練、訓練だな』
 電話の向こうから感心したような声が聞こえる。莉桜は頷いた。
「そうです。だから、素晴らしいシミュレーターをありがとうございます」
『お役に立てて何よりだ。まさか、こんな形で現場の声を聞くことになるとは思わなかったが』

 電話の向こうからはくすくすと楽しそうな笑い声が聞こえた。
『訓練のあとは? 乗務か?』
「はい。四勤二休が勤務体系なので、今日が一日目の勤務で明日も訓練、明後日とその次は国内線乗務です」

 航空会社の勤務体系は独特なので先に説明しておいた方がいいと莉桜は思ったのだ。
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