エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 胸をどきどきさせながらビルを出ると三十メートルほど離れた場所にハザードを付けて停車している車を見つけた。
 莉桜はキャリーバッグを引いて早歩きし車に向かうと、運転席から五十里が降りてくる。

 黒のSUVからスーツ姿で降りてくる姿を見て、胸の鼓動が大きくなった。交際しようと言われてからは初めて見る姿だったからだ。
 莉桜に気づいて軽く手を上げたのが見えた。思わず自分も笑顔になっていたことに莉桜は気づいていない。
「無事に戻ったな」
 なんと表現すればいいのだろう。
 胸をきゅっと締め付けられるような気持ちで温かさを感じる。

「ただいま、戻りました」
「おかえり」
 おかえりと言ってくれる人のいることがこれほどに幸せなものだとは思わなかったのだ。
 五十里は自然に莉桜を抱き寄せて軽くハグする。
「会いたかった」
 甘くてストレートなその言葉に莉桜は軽く抱き返した。

 五十里の腕の中はとても逞しくて、グリーンとムスクの混じった香水の香りはとても落ち着く。
「迎えに来てくださってありがとうございます」
「一刻も早く会いたかったからな」
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