エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 ──なんてことを言ってしまったんだろう!
 莉緒は真っ赤になる。
「違います! そういう意味じゃなくて!」
 くつくつと肩が揺れている。
「五十里さんはたまにいじわるですよね」
 莉桜はふくれて見せた。そんな莉桜にも五十里はくすくす笑っている。

「莉緒の反応が可愛いからな。悪気はないんだ。好きなカクテルを選んだらいい」
「五十里さんはどうしますか?」
「やっぱりここはマティーニだろう。マティーニはバーテンダーの腕で味が左右されるから」
 莉緒にはマティーニは大人っぽ過ぎる。
「カンパリオレンジにします」
「いいカクテルを選んだな」
「いい、ですか?」

「カクテル言葉って知ってるか?」
 こくりと莉緒は頷く。カクテル言葉とはカクテルごとにつけられた象徴的な言葉のことだ。
「知っています。花言葉のようなものですよね」
「マティーニは『知的な愛』」
 五十里にぴったりだ。

「カンパリオレンジは『初恋』だ」
 どきん、としてしまう。
「なんか……ぴったりでどきっとしました」
「初恋?」
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