エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

「今日は35Ｅ、43Ａにお子さまが搭乗されます。ギブアウェイの準備をお願いいたします」
「はい」
　呼ばれたシート担当のクルーが返事をする。
　ＪＳＡでは子どもにはサービスの際にギブアウェイというおもちゃを渡すことになっているので、そういった情報も共有の対象なのだ。

　いろんな打ち合わせを終えた際に、パーサーがにこやかに口を開いた。
「ビジネスクラスを担当する倉木さんは今日が初めてのサービスになります。倉木さん、緊張していると思うけど、なにかあったら先輩になんでも聞いてね。ビジネス担当クルーは倉木さんのフォローもお願いたします」
　まさかここで自分の名前が出るとは思わなかった莉桜は慌てて頭を下げた。
「よろしくお願いいたします！」

　他のクルーがにこやかに「おめでとうございます。倉木さん、頑張ってね」と声をかけてくれて安心する。
「はい。ありがとうございます。頑張ります」
　クルー達は協力して飛行機を飛ばすという意識が高い。そのためクルー同士は結束が固く、厳しいながらも優しい。
　厳しいのはクルーの行動が安全に関わることがあるからだ。だから情報共有や協力することの大切さを研修のときに徹底的に叩き込まれる。
　目立つことや足の引っ張り合いは不要な場所なのだ。