エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「では、参りましょう。皆さん、よろしくお願いいたします」
 チーフパーサーの声に「よろしくお願いいたします」とクルー達が返す。
 そこでみんなでサッと席を立ち、横に置いていたキャスターバッグを引きながら、シップと呼ばれる飛行機に向かう。

 一般的に客室乗務員の勤務は四勤二休で、今回はシカゴへの直行便となるが、ステイという現地での宿泊が二日ある。シカゴまでの飛行時間は約十二時間だ。
 その十二時間の間に同じ場所を担当するクルーと交代で休むことになっていた。
 今回、ビジネスクラスの担当は四名なので順繰りに休憩があるのだ。
 帰りは日付変更線を跨ぐことになるので、ベースである羽丘国際空港に帰ってきたら、その後二日間が休みとなる。
 莉桜もシカゴへは行ったことがあったが、今回は長めのステイとなるので、もし可能なら観光などしようと少し楽しみにしていた。

 キャスターバッグを引いてゲートに向かうと、ゲートの手前で機長二名と副操縦士一名の姿が見える。今日の機長はJSAでも有名な貴堂誠一郎のようだ。
 爽やかなイケメンとして有名であり、それ以上に天才パイロットとして名高い。
「ブリーフィングをお願いします」
 ブリーフィングは機内で行うこともあるが、メンバーが揃えばゲートの中で行うこともある。
 今日はメンバーが揃っていたので、ゲートの中でそのまま行うようだ。
 天候やサービスのタイミングや揺れの予想される場所、それからベルトのタイミングなどのパイロットからの共有事項の打ち合わせの他、客室からも共有すべきことをチーフパーサーが伝える。
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