エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

「まあ、こっちの人は怖いよな？　君は……機内でも会ったな」
　そう言うと慌てたように彼女は再度、音がしそうなくらいペコリ！　と頭を下げた。
「本当に何度も申し訳ございません！　でも、本当にありがとうございました！」

　どうやら彼女の方も五十里があの時の乗客であるということは気づいているようだ。
　二度目の偶然。一度目から五十里の心に彼女の存在が引っかかっていたのは活き活きとした彼女の表情や子供へ見せた優しさや、キリッと仕事を全うするところに惹かれたからだ。

　それでも彼女にとって、今の自分は数ある顧客のひとりでしかないことも分かっている。
　だから五十里は彼女との縁に賭けることにした。
　──三度目の出会いがあったら、彼女にアプローチする。その時は引かない。

　そんなことは起きるか起きないかも分からない。
　だからこその賭けなのだが、それに勝ったら自分も彼女との縁を信じられると思ったのだ。
　来月の予定にＪＳＡへ行く予定はあった。新型機のシミュレーターの設置が完了しているはずで、来月研修があるので、その時にシミュレーターの使用感のフィードバックをしてもらう予定なのだ。
　もしもその時ＪＳＡで会ったら。その時は遠慮しない。