エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 しかしまさか研修生の中に彼女が紛れているとは思わなかった。その決心通り、五十里は遠慮しなかった。
 少し強引にしてしまった覚えはある。それでも彼女とは一緒にいればいるほど惹かれるばかりだった。
 料理やワインにも造詣が深く、分からないことは知ったかぶらずに素直に教えを請う。
 レストランで素直にソムリエに教えを請う彼女は本当に側で見ていて和むものだった。その真っすぐなところさえも、気持ちいい。

 高級レストランにはただ喜ぶだけではなく「サービスの勉強になります」と目をキラキラと輝かせながら、クラブフロアのサービスを享受していた。そんな女性はなかなかいない。
 前向きで勉強家、素直で魅力的。一緒に時間を過ごすほどに沼のように彼女にのめり込んでいく自分を感じずにはいられなかった。

 ──もっと一緒にいたい。
 そんな風に思う女性とはなかなか出逢えない。しかもその彼女に『お付き合いをしたことはない』とか『お別れするのが寂しい』なんて素直に甘えられたら、今すぐにでも押し倒して彼女の全てを奪いたくなる。
 全てを奪いたい気持ちと大事にしたい気持ち。それらがせめぎ合って、初めてのことならなおさら莉桜のことを大事にしてあげたいという気持ちが勝った。
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