本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 74
12月29日――
この日は仕事納めだった。
「直人、ご苦労だったな」
父が声をかけてきた。
「いや、大丈夫。大分資金もたまってきたし、この分だと来年5月には川口家電の買収金額の半分を集められそうだし。そうすれば買収は免れて俺も社長令嬢と結婚しなくて済むからね」
すると何故か父の顔が曇る。
「直人……実はその事についてなのだが……」
そこに突然父のスマホが鳴った。
「あ……悪い。直人。弘からだ」
弘と言うのは父の弟で川口家電の副社長を務めている叔父さんだ。
「それじゃ、俺は帰るよ」
「ああ、またな」
父はスマホをタップして電話に出た。
「もしもし……」
俺は父に背を向けると、1人駅の方へ向かった。
この時の俺はまだ知らなかった。叔父さんからの電話が一体何を示すものだったのかと言う事を――
****
――21時
「ふぅ~…」
マンションの鍵を開けて中へ入り、すぐにコートを脱いでフックに掛けるとネクタイを緩めた。
「やっと今年も終わったか……」
背広を脱いでハンガーにかけると、すぐにバスルームへ向かった。
ピッ…ピッ…
モニターを操作し、湯張りするとすぐに着がえを取りに部屋へ戻った。
クローゼットからタオルと下着、部屋着を取り出してバスルームへ戻ると大分お湯がたまっている。
「……よし、入るか……」
風呂に入るべく、服を脱いだ――
「いい湯だったな……」
今夜の入浴剤はヒノキを使った。ヒノキ湯は鈴音も大好きな入浴剤だった。
2人で一緒に風呂に入った記憶が蘇る。そして、そのまま身体を重ねて愛し合った記憶も。
あの頃は、本当に幸せだった……。
「鈴音は今夜も仕事だったのかな……」
本当ならイブを一緒に過ごし、年末年始は2人で温泉旅行へ行ってゆっくり過ごす予定だったのに全て駄目になってしまった。
冷蔵庫に向かい、クラフトビールを持ってきた。このビールは鈴音が初めて俺のマンションへやってきて、2人で飲んだ思い出のビールだ。
『このビール、美味しいね』
鈴音は笑顔を向けて、俺に言った。その姿はとても可愛らしく……鈴音がどうしても欲しくなった。
そんな俺の訴えを鈴音は聞き入れてくれて……その夜、2人は初めて結ばれた。
「鈴音……今どうしているんだ……?」
実家に戻っているだろうか? それとも岡本と一緒に過ごしているのか?
鈴音の声が聞きたい。抱きしめてキスしたい。俺の傍にいて欲しい……。鈴音さえいてくれれば、他には何もいらないのに――
その時。
トゥルルルル…
突然スマホが鳴り響いた。着信相手は見るまでも無い。何しろこの電話にかけてくる相手は限られているのだから。
「もしもし……」
『直人? 今何時だと思っているの?』
いきなりこれだ。部屋の時計を確認すると22時少し前だった。
「21時45分だけど…?」
それがどうしたと言うのだろう?
『貴方ねぇ……! 一体今まで何してたのよ!!』
「何って……仕事から帰って、風呂に入って……それで……」
しかし、常盤恵理は話が言い終える前にヒステリックに叫んだ。
『どうしてよ! 仕事が終わったらすぐに電話をしなさいって言ってあるでしょう!? それなのに私に電話してくる前にお風呂に入っていたですって!?』
「あ……すまない。今夜は仕事納めで……かなり疲れていたから……」
だからできれば常盤恵理の声など聞きたくも無かった。これが鈴音だったら仕事が終わって、真っ先に電話をするのに。
『フン……まぁいいわ。それじゃ一つ教えてあげる。明日の朝6時のネットニュースを見るのよ。面白い記事が載るから。それじゃお休みなさい』
それだけ言うと電話は切れてしまった。
「明日の午前6時……? 一体何があるっていうんだ?」
首を傾げながらも、今日は盤恵理から解放された事が嬉しかった。
そこで俺はもう1缶ビールを飲む為に台所へ向かった――
この日は仕事納めだった。
「直人、ご苦労だったな」
父が声をかけてきた。
「いや、大丈夫。大分資金もたまってきたし、この分だと来年5月には川口家電の買収金額の半分を集められそうだし。そうすれば買収は免れて俺も社長令嬢と結婚しなくて済むからね」
すると何故か父の顔が曇る。
「直人……実はその事についてなのだが……」
そこに突然父のスマホが鳴った。
「あ……悪い。直人。弘からだ」
弘と言うのは父の弟で川口家電の副社長を務めている叔父さんだ。
「それじゃ、俺は帰るよ」
「ああ、またな」
父はスマホをタップして電話に出た。
「もしもし……」
俺は父に背を向けると、1人駅の方へ向かった。
この時の俺はまだ知らなかった。叔父さんからの電話が一体何を示すものだったのかと言う事を――
****
――21時
「ふぅ~…」
マンションの鍵を開けて中へ入り、すぐにコートを脱いでフックに掛けるとネクタイを緩めた。
「やっと今年も終わったか……」
背広を脱いでハンガーにかけると、すぐにバスルームへ向かった。
ピッ…ピッ…
モニターを操作し、湯張りするとすぐに着がえを取りに部屋へ戻った。
クローゼットからタオルと下着、部屋着を取り出してバスルームへ戻ると大分お湯がたまっている。
「……よし、入るか……」
風呂に入るべく、服を脱いだ――
「いい湯だったな……」
今夜の入浴剤はヒノキを使った。ヒノキ湯は鈴音も大好きな入浴剤だった。
2人で一緒に風呂に入った記憶が蘇る。そして、そのまま身体を重ねて愛し合った記憶も。
あの頃は、本当に幸せだった……。
「鈴音は今夜も仕事だったのかな……」
本当ならイブを一緒に過ごし、年末年始は2人で温泉旅行へ行ってゆっくり過ごす予定だったのに全て駄目になってしまった。
冷蔵庫に向かい、クラフトビールを持ってきた。このビールは鈴音が初めて俺のマンションへやってきて、2人で飲んだ思い出のビールだ。
『このビール、美味しいね』
鈴音は笑顔を向けて、俺に言った。その姿はとても可愛らしく……鈴音がどうしても欲しくなった。
そんな俺の訴えを鈴音は聞き入れてくれて……その夜、2人は初めて結ばれた。
「鈴音……今どうしているんだ……?」
実家に戻っているだろうか? それとも岡本と一緒に過ごしているのか?
鈴音の声が聞きたい。抱きしめてキスしたい。俺の傍にいて欲しい……。鈴音さえいてくれれば、他には何もいらないのに――
その時。
トゥルルルル…
突然スマホが鳴り響いた。着信相手は見るまでも無い。何しろこの電話にかけてくる相手は限られているのだから。
「もしもし……」
『直人? 今何時だと思っているの?』
いきなりこれだ。部屋の時計を確認すると22時少し前だった。
「21時45分だけど…?」
それがどうしたと言うのだろう?
『貴方ねぇ……! 一体今まで何してたのよ!!』
「何って……仕事から帰って、風呂に入って……それで……」
しかし、常盤恵理は話が言い終える前にヒステリックに叫んだ。
『どうしてよ! 仕事が終わったらすぐに電話をしなさいって言ってあるでしょう!? それなのに私に電話してくる前にお風呂に入っていたですって!?』
「あ……すまない。今夜は仕事納めで……かなり疲れていたから……」
だからできれば常盤恵理の声など聞きたくも無かった。これが鈴音だったら仕事が終わって、真っ先に電話をするのに。
『フン……まぁいいわ。それじゃ一つ教えてあげる。明日の朝6時のネットニュースを見るのよ。面白い記事が載るから。それじゃお休みなさい』
それだけ言うと電話は切れてしまった。
「明日の午前6時……? 一体何があるっていうんだ?」
首を傾げながらも、今日は盤恵理から解放された事が嬉しかった。
そこで俺はもう1缶ビールを飲む為に台所へ向かった――