本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
亮平 54
「鈴音が付き合っていた相手は川口家電の御曹司だったんです。でも本人は引越し会社に勤めていて、鈴音にもその事実を隠していました」
「そうだったの?」
「はい、鈴音がその事実を知ったのは、相手の男が黙って鈴音の元から去ってしまった後でした。川口家電は赤字経営で倒産寸前だったんですよ。そして父親と一緒に支援してくれる会社を探しに行った時にそこの社長令嬢に見初められて、結婚を条件に援助してもらえることになったんです。それで2人は別れることになったんですよ」
「そんな事があったなんて……」
忍がため息をついた。今の忍は鈴音を本当に大切に思ってくれている。そこで俺は知っている事全てを家に帰るまで忍に話した――
****
その日の夜、俺はいい気分だった。何故いい気分なのか‥…それは3人で食べた年越しそばは美味かったし、楽しみにしていたテレビを鈴音と2人で一緒に観ているからだ。今朝は思いがけず井上からの電話で嫌な気分だったが、隣に鈴音がいるだけでそんなものは吹き飛んでしまう。
「……」
鈴音が用意してくれた梅酒を飲みながら隣に座る鈴音をチラリと見る。鈴音も気分が良いのだろうか? 白い肌にお酒のせいか、アルコールで少し頬が赤く色づいて妙に色気が漂っている。思わず鈴音をじっと見ていると視線に気付いたのか、顔を上げた。
「何?」
「あ、いや。随分幸せそうな顔して梅酒飲むなと思ってさ」
慌ててごまかす。
「幸せ……」
そう呟いた鈴音は今度は何故かじっと見つめてくる。
「何だよ? 人のことガン見して」
「あ、あのさ……亮平は……」
ん? 一体何を言うつもりだ?
「何でもない!」
しかし、鈴音は答えずに梅酒を一気飲みした。
「おい、まだ飲むのかよ? この間みたいに酔いつぶれたらどうするんだよ」
流石に心配になって声をかける。
「大丈夫だよ、だってここは家なんだから。亮平も飲みなよ。梅酒好きでしょ?」
「ああ、まあな……」
そうだな、ここは家なんだし……。まぁいいか。そうして2人で梅酒をその後も飲みつ続け……とうとう鈴音は酔いつぶれて寝てしまった。
****
「……ったく、しようがないな……こんなところで寝てしまうなんて。おい、鈴音。起きろよ。風邪引くぞ?」
肩を掴んで揺さぶる。
「う〜ん……」
しかし鈴音は目を開けない。
「鈴音、鈴音ってば」
「……」
鈴音はすっかり眠っている。それを見ていると、再び妙な感情が生まれてくる。
いいよな……鈴音……ちょっとくらいなら……。俺は……お前の事が……。
目を閉じて鈴音にそっとキスをした。すると、あろうことか鈴音は俺の首に腕を回し、強く唇を押し付けてきた。
「!」
鈴音……まさか、俺の事を……?!
嬉しさのあまり、調子に乗ってしまった。鈴音の折れそうなほどに細い身体を強く抱きしめ、舌を絡めとった。
「うぅううん……」
すると鈴音が目を開ける気配を感じ、慌てて鈴音から身体を離した。
「す、鈴音……」
鈴音は潤んだ瞳で俺を見つめている。……しまった。調子に乗りすぎただろうか……?
だが、俺はお前が……。
しかし、次の瞬間……凍りつく。
「直人さん……」
「え……?」
鈴音はフッと笑うと、再び目を閉じた。
「そっか……そうだよな……」
途端に激しい罪悪感に襲われる。
そうだ……鈴音が自ら俺を求めたのは、俺の事を川口だと勘違いしたからなんだ……。
そう思った途端、目から一筋の涙が流れた――
「そうだったの?」
「はい、鈴音がその事実を知ったのは、相手の男が黙って鈴音の元から去ってしまった後でした。川口家電は赤字経営で倒産寸前だったんですよ。そして父親と一緒に支援してくれる会社を探しに行った時にそこの社長令嬢に見初められて、結婚を条件に援助してもらえることになったんです。それで2人は別れることになったんですよ」
「そんな事があったなんて……」
忍がため息をついた。今の忍は鈴音を本当に大切に思ってくれている。そこで俺は知っている事全てを家に帰るまで忍に話した――
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その日の夜、俺はいい気分だった。何故いい気分なのか‥…それは3人で食べた年越しそばは美味かったし、楽しみにしていたテレビを鈴音と2人で一緒に観ているからだ。今朝は思いがけず井上からの電話で嫌な気分だったが、隣に鈴音がいるだけでそんなものは吹き飛んでしまう。
「……」
鈴音が用意してくれた梅酒を飲みながら隣に座る鈴音をチラリと見る。鈴音も気分が良いのだろうか? 白い肌にお酒のせいか、アルコールで少し頬が赤く色づいて妙に色気が漂っている。思わず鈴音をじっと見ていると視線に気付いたのか、顔を上げた。
「何?」
「あ、いや。随分幸せそうな顔して梅酒飲むなと思ってさ」
慌ててごまかす。
「幸せ……」
そう呟いた鈴音は今度は何故かじっと見つめてくる。
「何だよ? 人のことガン見して」
「あ、あのさ……亮平は……」
ん? 一体何を言うつもりだ?
「何でもない!」
しかし、鈴音は答えずに梅酒を一気飲みした。
「おい、まだ飲むのかよ? この間みたいに酔いつぶれたらどうするんだよ」
流石に心配になって声をかける。
「大丈夫だよ、だってここは家なんだから。亮平も飲みなよ。梅酒好きでしょ?」
「ああ、まあな……」
そうだな、ここは家なんだし……。まぁいいか。そうして2人で梅酒をその後も飲みつ続け……とうとう鈴音は酔いつぶれて寝てしまった。
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「……ったく、しようがないな……こんなところで寝てしまうなんて。おい、鈴音。起きろよ。風邪引くぞ?」
肩を掴んで揺さぶる。
「う〜ん……」
しかし鈴音は目を開けない。
「鈴音、鈴音ってば」
「……」
鈴音はすっかり眠っている。それを見ていると、再び妙な感情が生まれてくる。
いいよな……鈴音……ちょっとくらいなら……。俺は……お前の事が……。
目を閉じて鈴音にそっとキスをした。すると、あろうことか鈴音は俺の首に腕を回し、強く唇を押し付けてきた。
「!」
鈴音……まさか、俺の事を……?!
嬉しさのあまり、調子に乗ってしまった。鈴音の折れそうなほどに細い身体を強く抱きしめ、舌を絡めとった。
「うぅううん……」
すると鈴音が目を開ける気配を感じ、慌てて鈴音から身体を離した。
「す、鈴音……」
鈴音は潤んだ瞳で俺を見つめている。……しまった。調子に乗りすぎただろうか……?
だが、俺はお前が……。
しかし、次の瞬間……凍りつく。
「直人さん……」
「え……?」
鈴音はフッと笑うと、再び目を閉じた。
「そっか……そうだよな……」
途端に激しい罪悪感に襲われる。
そうだ……鈴音が自ら俺を求めたのは、俺の事を川口だと勘違いしたからなんだ……。
そう思った途端、目から一筋の涙が流れた――