本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます ~side story ~
川口直人 23
加藤さんはどう思っていたか分からないけれど、俺にとってはとても楽しい時間だった。2人で入った焼き鳥屋。加藤さんが美味しそうに食事している姿を見るだけで心が満たされていくようだった。この先もずっとこんな風に2人で過ごせたらいいのに。
そしてここで加藤さんのことについて一つ、知ることが出来た。親子丼が大好きだっていうこと。だから思い切って言うことにした。
「あの……さ」
ビールのジョッキを握りしめながら加藤さんを見る。
「何?」
首を少し傾けて俺を見る彼女に胸の鼓動が高鳴る。……本当になんて綺麗な女性なんだろう……。
「また……加藤さんさえよければ一緒にこの店に食べに来ないかい? 加藤さん、今親子丼が好きだって言ってただろう?」
「うん。確かに言ったけど……」
加藤さんは少し考える素振りで答える。
「うんそうだね? それじゃ今度機会があったら行ってみようか?」
OKしてくれた! だったらすぐにでも約束を取り付けておかないと!
「それじゃ、いつにする?」
「え? え……と……。突然そんな事言われても……。今決めなくちゃダメ?」
迷っている加藤さん。困らせているのは良く分かっていたけれど、俺はこのチャンスを逃したくは無かった。
「できれば……今決めて貰いたい。また今度って言葉で片付けられたら……何だかそれきりになりそうだから……」
つい、本音をぽろりと言ってしまう。
「……そ、それじゃ……来月はどう?」
「え? 来月? そんなに間を開けなくちゃ駄目なのかい?」
来月……? やっぱり俺の存在は迷惑なのか……?
「う、うん。ほら、シフトの問題とか……色々あるから、ちょうど一カ月後なら大丈夫だと思うから」
加藤さんが社交辞令で言ったと言う事が分かってしまった。
「そっか……」
さっきまでの楽しい気分は何処かへ吹き飛んでしまった。落ち込む俺に加藤さんが声をかけてきた。
「ほ、ほら! 川口さん。もう少しお酒飲もうよ。そうだな~今度は私熱燗にしてみようかな。身体があったまりそうだし」
「うん……そうだね。それじゃ頼もう」
俺は無理に笑い……今のこの時間を楽しもう……と心に決めた――
****
2人で並んでマンションへ帰る。俺も加藤さんも互いに無言だった。やはりさっきの焼き鳥屋で気まずくなってしまったのが原因だった。そしてマンションが見えてきた頃……このままの空気でさよならをしたくなかった俺は夜空を見上げた。
「やっぱり…冬の星空は綺麗だな」
「うん、そうだね」
加藤さんが白い息を吐きながら言う。
「約束……」
その言葉を口にした。
「え?」
「来月……必ず一緒にあの店へ行こう。約束だよ?」
そしてじっと加藤さんの目を見つめる。その瞳は……かすかに揺れていた。
「も、勿論だよ」
そして笑みを浮かべて俺を見つめてくれる。
「よし、それじゃ……また!」
俺は加藤さんに手を振ると、マンションの中へと入って行った。
そうだ、俺と加藤さんはご近所同士。何も焦る必要は無いだろう。
時間はまだまだあるのだから……。そして今度会ったその時は加藤さんに告白をするんだ――
この時の俺は、加藤さんの身に不遇の出来事が起こることも、それから長い時間会うことも叶わなくなるとは思ってもいなかった――
そしてここで加藤さんのことについて一つ、知ることが出来た。親子丼が大好きだっていうこと。だから思い切って言うことにした。
「あの……さ」
ビールのジョッキを握りしめながら加藤さんを見る。
「何?」
首を少し傾けて俺を見る彼女に胸の鼓動が高鳴る。……本当になんて綺麗な女性なんだろう……。
「また……加藤さんさえよければ一緒にこの店に食べに来ないかい? 加藤さん、今親子丼が好きだって言ってただろう?」
「うん。確かに言ったけど……」
加藤さんは少し考える素振りで答える。
「うんそうだね? それじゃ今度機会があったら行ってみようか?」
OKしてくれた! だったらすぐにでも約束を取り付けておかないと!
「それじゃ、いつにする?」
「え? え……と……。突然そんな事言われても……。今決めなくちゃダメ?」
迷っている加藤さん。困らせているのは良く分かっていたけれど、俺はこのチャンスを逃したくは無かった。
「できれば……今決めて貰いたい。また今度って言葉で片付けられたら……何だかそれきりになりそうだから……」
つい、本音をぽろりと言ってしまう。
「……そ、それじゃ……来月はどう?」
「え? 来月? そんなに間を開けなくちゃ駄目なのかい?」
来月……? やっぱり俺の存在は迷惑なのか……?
「う、うん。ほら、シフトの問題とか……色々あるから、ちょうど一カ月後なら大丈夫だと思うから」
加藤さんが社交辞令で言ったと言う事が分かってしまった。
「そっか……」
さっきまでの楽しい気分は何処かへ吹き飛んでしまった。落ち込む俺に加藤さんが声をかけてきた。
「ほ、ほら! 川口さん。もう少しお酒飲もうよ。そうだな~今度は私熱燗にしてみようかな。身体があったまりそうだし」
「うん……そうだね。それじゃ頼もう」
俺は無理に笑い……今のこの時間を楽しもう……と心に決めた――
****
2人で並んでマンションへ帰る。俺も加藤さんも互いに無言だった。やはりさっきの焼き鳥屋で気まずくなってしまったのが原因だった。そしてマンションが見えてきた頃……このままの空気でさよならをしたくなかった俺は夜空を見上げた。
「やっぱり…冬の星空は綺麗だな」
「うん、そうだね」
加藤さんが白い息を吐きながら言う。
「約束……」
その言葉を口にした。
「え?」
「来月……必ず一緒にあの店へ行こう。約束だよ?」
そしてじっと加藤さんの目を見つめる。その瞳は……かすかに揺れていた。
「も、勿論だよ」
そして笑みを浮かべて俺を見つめてくれる。
「よし、それじゃ……また!」
俺は加藤さんに手を振ると、マンションの中へと入って行った。
そうだ、俺と加藤さんはご近所同士。何も焦る必要は無いだろう。
時間はまだまだあるのだから……。そして今度会ったその時は加藤さんに告白をするんだ――
この時の俺は、加藤さんの身に不遇の出来事が起こることも、それから長い時間会うことも叶わなくなるとは思ってもいなかった――