ハイスペ上司の好きなひと
「秋山もぼやいてたぞ。時々飛鳥の視線が痛いって」
「後ろ暗い事が無ければ何も気にする必要は無いかと」
「お前ほんとに図々しくなったな」
前はあんなに可愛らしかったのに、と一ノ瀬がぼやいたところでエレベーターが到着し、後ろに続く他の社員と一緒に乗り込む。
朝の出勤時間との事でエレベーター内は狭々しくなり、航輝によって角に誘導された紫は壁際に立ち、周りから阻むようにその隣に航輝が立った。
そしてその下で密かに、航輝に手を握られ指を絡ませられた。
「…っ」
余程舞い上がっているのか、紫が正式に航輝の部屋に居を移してから文字通り航輝は紫にベッタリで、時間と共に紫も麻痺していた。
好いてくれているのはとても嬉しいが、周りから指摘されると恥ずかしいというものが人間の心理だと思うものの、長い間海外に身を置いていた航輝はその辺りがバグっているらしい。
——いや、そんなまさか…
恋人になってのこの2年弱、社内で軽い触れ合いを求められたことはあるがさすがに人前では控えていた。ここにきてブレーキが壊れてきている気がするのは、やはり同棲を許した所為なのか。