【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。

僕の交際相手は、彼女です。



 私も誰かのために役に立てる仕事がしたいと思っていたのに、いつからこんなことになってしまったのだろうか。
 元の部署に戻ることも難しそうだし、このまま働き続けることが辛くなるだけだ。
 やっぱり私も、早く決めなきゃな……。

「豊佳?」

「……え? あ、ごめん。なに?」

 翡翠さんに名前を呼ばれてハッとした。

「ここはいいから、少し向こうで休んできな」

「え? でもまだ片付け、残ってるし」

「いいから、いっぱい働いてくれたんだし、休んでこい。身体が持たないぞ」

 翡翠さんからそう言われて、私は「わかった。少し休んでくるね」と休憩室へ入った。

「でも、楽しかったな」

 お客様の喜ぶ顔をあんなに近くで見られるのって、やっぱりいいよね。 お客様の生の声が聞こえるのって、やっぱりこういう仕事じゃないと無理だろうなって感じた。

「転職か……」

 それも悪くないんだけど、次に私がやりたいことってなんだろう。……また同じ仕事、出来るのかなあ。

 そんなこんな考えているうちに、いつの間にか翡翠さんのメディアの取材が始まっていた。
 私もその取材を、休憩室を出て後ろの方から見ていた。
 メディアの取材を受けている時の翡翠さんは、本当に真剣で、またお店のシェフの時とは違う顔を見せている。

「横顔、カッコイイ……」

「なんか言いました?」

 しまった! 心の声が漏れてしまっていた……!

「ううん。なんでもない」

 翡翠さんって、本当にイケメンだ。
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